NX1と16-50 f2-2.8を使ってから、サムスンにはもう少し頑張ってほしかったと思うようになった。
半導体大手として、いまもソニーの撮像素子業界最大のライバルとして、デジカメという戦場でもソニーと戦ってほしかったと思う。
高騰するミラーレスを見るにつけ、ソニーのやりたい放題をどうにかできるとしたら、サムスンしかなかったはずだ。キヤノンでは力不足だ。
撮像素子をソニーから買っているニコンはソニーの一お客さんでしかなく、最初からソニーの相手ではない。
もっとも、ソニーのマーケティングが上手なのはZV-E10という廉価機をちゃんとリリースしているところだが…。
サムスンが一定のシェアをあげながら、三強に食い込めなかった、つまりソニーとの違いはレンズ資産だったと思う。
日本人はブランド力だと言うだろうが、残念なことに欧米では日韓の区別がつくのは一部のエリートか好事家だけで、サムスンの知名度はパナソニックを遙かにしのぐ。ギャラクシーブランドにしないと誰も買わないという異様な地域は世界でも日本だけだ。
ソニーの成功のひとつは、Aマウントのレンズ資産であった。
事業譲渡後もラベルをソニーに張り替えただけで、多くのレンズをミノルタがOEM供給していたようだ。実際同じものだ。見ればわかる。
ゆえに、ソニーはレンズをそろえる必要もなかったし、ミノルタユーザーを引き続き顧客にすることができた。
ミノルタは凋落してはいたが、少なくともシェア三位なのは確かだった。
ソニーは0スタートではなかった。
OMにAF資産のなかったオリンパスや、新規参入だったパナソニックは0スタートだったためにフォーサーズのシェアは低空飛行を続け、浮上することがなかった。
しかし、ミラーレス化はかつてのAF化のようなもので、マウント変更してもいいかなという流れを生んだ。キヤノンがEFマウント化で帝国を築いたように千載一遇のチャンスだった。
カメラ女子ブームも手伝い、FT陣営は一定のシェアを獲得したが、ソニーもまた、Eマウントでシェアを拡大した。
ひとつにはキヤノンのフルサイズ至上主義マーケティングを逆手にとったこと(α7)とミノルタユーザーの乗り換え需要だっただろう(α99という10年使えるフラッグシップやLA-EA5を出すことでソニーは丁寧に旧ユーザーへ配慮し、保守的なカメラ界隈で地歩を盤石にした)。
サムスンもまたゼロスタートだった。
NXレンズはFTレンズのように廉価ではなかった。
このあたりが問題だったと思う。
せっかくペンタックスのOEM供給を受けていた歴史がある(ペンタックスのOEM一眼レフをサムスンは販売していた)のだから、そのまま協力関係を維持してK-NXアダプターを出していけばよかった。
純正アダプター自体は存在するがマーケティングや性能がイマイチだったようだ。
ED-MA9NXKという型番だが、B&Hの説明には、
The Samsung K-Mount Adapter allows you to connect any K-mount lens to NX10 digital cameras. This mount will work in manual focus mode only, it does not support AF mode.
とあり、マニュアルフォーカスしかできない。
Kマウントなら中古市場にごろごろ出物があるわけで、ボディのシェアを拡大していく過程で有利になったはずだし、ペンタックス側も今度は逆にサムスンのミラーレスをOEM供給を受ければよかったのだ。
どっちみちセンサーはサムスン製だったのだ。
サムスンセンサーをこき下ろす人も多いが、NX1のセンサーはDxOスコアでも同時期のαより若干よく、実際使ってみれば悪くないことが理解できるはずだ。
ヒュンダイ車をむやみにこき下ろすのと同じ心理(ヒュンダイ車の故障率は日本メーカーより高いのは事実だが、欧州車やアメ車に比べて有意に多いわけではない)だろう。
韓国であれば憎い。特に若年層のユーザーが少ないカメラ界隈は顕著であろう。
そうすれば、サムスンはサムスンであることを隠し、日本で売ることができる(スマホをギャラクシー名義にしているのと同じ)。
これはオリンパスパナソニック連合やLマウントアライアンスよりも成功する見込みがあったように思える。
オリパナ連合では、最初からパナソニックがオリンパスに対し協力的ではなく(当時のインタビューなどから)、オリンパス側にあまりメリットがなかったように見える(レンズの互換性に問題が生じ、SSWFの見返りに供給されたセンサーは性能がよくない)。
レンズも似たようなものが純正で二つ出るため、食い合いも生じた。
パナソニックもライカにフルサイズをOEM供給していたわけで(公式に発表はないがSLが初代からコントラストAFのみだった時点でパナ製なのは明らかだ。ソニー製センサーを使っているなら象面位相差を組み込めばいいのにしていないということは、ライカはパナの発注したソニー製センサーの仕様のまま自社では何も開発していないことを意味する)、フルサイズ参入の足かせになった(本当はSLの出た2015年参入のはずだ)。
どちらにとってもマイナスばかりだったように見える。
Lマウントアライアンスにしても、ライカは単なる名義貸しで、レンズもボディもパナがつくるのだし、シグマもシグマでSAマウントがあまりにも普及しなかったのでミラーレス化に際し、ファーストパーティでありつつ、一定のシェアを得るためにLマウント参入をしたようにしか見えない(貧乏人がSLにシグマのレンズをつけてくれるかもしれぬ)。
オリンパスも参入すればよかった論があるが、ライカとパナが拒絶したに決まっている。
カメオタ以外の知名度ならオリンパスはライカに全然引けを取らないし、そもそも光学屋なのでレンズ性能もいい。
オリを入れることはライカ、パナ、シグマの三者にとって損しかない。
その点、サムスン・ペンタックス連合は完璧じゃないか。
HOYAがカメラ以外のブランドを保持していることからもわかるように、光学機器でPENTAXというのは一定のブランドがあるので、サムスンはPENTAX名義をレンズで使用する。
逆にミラーレスではペンタックス側がサムスンの知名度を使用する。
一眼レフでも、ミラーボックスと外装以外はサムスンがつくればいい。ペンタックス一眼レフもキャノニコに引けを取らない出来になったはずだし、早い段階で裏面照射や象面位相差を導入できたはずだ(ニコンもキヤノンも遅かった)。
以下の記事からわかるが、大型のデジカメセンサーに裏面照射を最初に採用したのがサムスンだ。
Kマウントが完璧に使えればNXはもっと普及したはずだ。
NX1は2024年現在でも完璧に使用できると断言できる性能だが、これは裏面照射2800万画素とサムスン製のアルゴリズムによる象面位相差AFによるところが大きいだろう。
キヤノンにできてサムスンにできないはずがないので、フルサイズだって出せたはずだ。
NXレンズはAPS-C用だったかもしれないが、Kが使えれば、時間は稼げる。Kマウントのレンズにはフルサイズ対応がたくさんあるだろう!
ソニーのようにおいおいフルサイズ対応NXマウントレンズを増やせばいいのだ。
どっちにとってもWINWINだったはずだ。
しかし、重大な問題があるのだ。NXマウントのマウント径は42mmなのだ。コレは厳しい。厳しいと言われたソニーのEですら46.1mmであるし、フルサイズマウントで一般的なのは44mm(M、K、F)だ。ついでにFTもXも44mmである。EF-Mは47mmだ。
無理じゃね?
サムスン最大の失敗はコレのような気もするが、私はもう少し頑張ってほしかった。どうせならNX-Miniなんてクソみたいなマウントを新しく作るくらいなら、ペンタックスと一緒にミラーレス新規マウントを作ってほしかったよ。