ソニーが中判に参入するという噂があるが、ソニーならやりそうである。
さて、ソニーがPSをリリースした理由が任天堂の裏切り行為にあったというのは有名な話である。
ソニーのCD-ROM外付けデバイスをSFCに採用するという約束を任天堂が反故にしたのである。
当時ゲーム業界はまだまっとうな商売ではなかったし、大企業ソニーが本気で参入するような分野(大手も参入はしていたがあまり本気ではなかったように見える)ではなかったが、キレたソニーは本気になった。
PSは最初から赤字覚悟の商売であった。
任天堂に一矢報いるのが本当の目的だったからである。
そして、ソニーは実際のところ大きくシェアを獲得し、現在に至る。以降、Wiiの時期を除き、任天堂が世界シェアトップになったことはない。
1991年にソニーを裏切ったばかりに任天堂は得られるはずだった莫大な利益を失ったことになる。
ソニーの怖いところはパナのような日本的企業と違い、赤字でも最終的に勝てばいいというロジックで攻めてくることだ。
これはソフトバンクもヤフーBBを拡散するにあたり同様の戦術をとり、旧態依然としたNTTが値下げせざるをえず、世界一ブロードバンド料金が安くなったのも有名な話であろう。
実際Aマウントはそうであったようだ。
2000年代はコンデジが売れに売れた時期であった。
ソニーはコンデジでは大きなシェアを持っており、儲かっていたが、その儲けをあろうことかAマウントの開発費にあててしまっていたのだ。
実際、Aマウント自体は大赤字だったようだ(もっともレンズ交換式自体がカメラの歴史上、実は売り上げ的には傍系であるのは事実だが)。
しかし、これでノウハウが蓄積し、Eマウントがデビューするのだ。
とはいえ、初代α7はあの価格でペイできていたかどうかは非常に怪しく、いつもの赤字戦略だったのではないかと疑っている。
また、ソニーは撮像素子の外販によってノウハウを蓄積してきた。
そう。相手はニコンである。
ニコンがキヤノンと互角の戦いが出来たのも、Z9をリリースできたのも、すべてはソニーのお陰(正確にはソニー、ソシオネクスト、コパルのお陰。ニコンはボディに関してはアセンブルメーカーでしかない。レンズはさすがではあるが)である。
ソニーはニコンにフルサイズを供給することで技術的な蓄積を得ていったと思われる。
最初にソニー製で象面位相差を搭載したのはNikon1だが、これも実験の一環だったのだろう。
現在ソニーはフェーズワンや富士に中判センサーを供給しているが、この流れでいくと、ある程度市場の固まったデジタル中判市場に満を持して突撃してくる気がしないでもない。
フェーズワンも富士も殿様商売なので、ソニーの赤字戦略が火を噴くのではないか。中判デジカメをレンズキットで30万台でリリースしてくるのではないか。
ZV-E10という廉価なレンズキット機を唯一売っているのがソニーなので期待してしまう(キヤノンもR100のようなものをリリースしているが、ちゃんと発売時の最新機能を搭載しているZV-E10と比べるのはおろかだろう)。
ソニーは元々放送機器最大手である。
ファミリー用のハンディカムから、テレビ、ドラマ撮影までビデオ機材といえばソニーであるが、ソニーはシネマ分野は進出がイマイチだった。しかし、最近はシネマ分野も浸食している。
何度も言っているのだが、ソニーと互角に戦える現役のメーカーは内製比率の高いキヤノンしかない(かつて製造していたメーカーならSAMSUNGが一番対抗できたはずだが)。
アセンブルメーカーであるOMやリコー、富士フイルム、ニコンでは話にならないし、パナソニックもソニーセンサーありきだ。
オリンパスとニコンは元来、光学機器メーカーだったのでレンズ自体は内製が多かったが、レンズも中国企業が進出していて、コモディティ化が進行している。
また、レンズのエンコーダなどはソニーやニコンの自社製品などでも、中国企業が作ったモジュールを採用している場合が多いらしく、このあたりで中国企業はレンズ関連のノウハウを備蓄していったと思われる。