Camalpaca

なんかアクセスが増えて驚いてます。多くの人が見ていると思うと急に過去の文章が恥ずかしくなってきたので、誤字脱字とか雑な改行や色変えとか直そうかなあと思います。よろしくお願いしますね。いったん修正した記事も戻していくので、また来てくださいね。

Zマウントとソニー、革命

 ソニーがZ9やR5のせいで劣勢になって負けるから、Zマウントアライアンスを、という論調があるらしい。ちょっと頭悪いんじゃないかな、と思った。

 もう、マウント径だの、フランジバッグだのという「物理」の時代は終わっているのだ、ということがアナログカメラ時代の人間にはわからんようだ。

 EFとRFは口径や設計がほとんど同じで、最大の違いはデジタル部にある。EFは初代EOSからの互換性を維持せねばならなかったので「デジタル的」に制約があった。マウントの物理特性とはおよそ無縁の話だ。
 間違っても「マウントに物理的制約」がなくなったからRFはEFより優れている、ということではない。

 これはカメラメーカーも悪い。
 小金を持っているおじさんたちはデジタルが理解できないから、Zマウントのように「口径」というほとんど意味のないものがすんごい価値があるかのように宣伝している。いっておくけど、EとZに差はない。

 口径なんてのは、センサやソフトウェア処理といった「デジタル部」に比べれば誤差の範囲でしかない。

 そして、ビジネス的にソニーがZを頂く理由がない。
 これはLマウントアライアンスとの決定的な差だ。

 Lマウントにどうしてオリンパスがいないのか? が答えだ。

 これはオリンパスフォーサーズ規格こそがデジタル時代のフォーマットと言う信念を貫いた(E-1のときからずっと一貫して言っており、他者のようにAPS-Cからフルサイズ、MFTからフルサイズという宗旨替えを結局しなかったし、オリペン時代からオリンパスは小フォーマットをずっと指向している。フルサイズに参加「できなかった」のではなく、「しなかった」のだ)こともあるが、別の理由もある。

 アライアンスにオリンパスを「入れてはならなかった」のだ。入れると、残り三社のメリットが崩壊する。
 ライカはブランドを、シグマはレンズを、パナはボディを、とLマウントアライアンスは食い合いが起きず、WINWINだ。しかし、ここにオリンパスを入れるとまずい。

 オリンパスは当然歴史ある光学メーカーであり、光学医療機器メーカーだ。知名度も高い。
 私の、カメラに不案内な知人たちでは、むしろ、ニコンよりも知名度が高いくらいだ。つまりブランド力もあり、レンズ設計能力も高い。そんなやつを入れるメリットなどなかった。

 ソニーニコンもそうだ。
 ソニーにはなんもメリットがない

 カメオタ的にはニコンが格上かもしれないが、一般的にもシネマ業界的にも(企業の力的にも)ソニーが明らかに格上だし、ソニーは光学家電をたくさんつくってきたメーカーなので、光学技術でニコンから学ぶことなどない(例えばブルーレイプレイヤーの読み取りレンズの精度はスチル用レンズとは次元の違う精度が求められるが、ニコンは作ったことがない)し、ボディではソニーが優れている。

 ほらね、メリットなんかない。

 ミラーレスは「デジタル」の勝負だ。

 これを端的に示すのが、オリンパスがセンサーはフォーサーズのままで、ミラーレス移行時に口径を「小さく」したことだ。これで何かかかわったか? 何も変わっていない。ソフトウェア補正するからだ。
 これはオリパナが端緒だったが、結局、全社後追いした。ミラーレス時代は、ある意味、オリンパスの最盛期だったといえる。全社が後追いしたのだから。
 RFもソフトウェア補正前提のきっつい収差のレンズがいっぱいある。そんなソフトウェア補正全盛の時代に、物理的な「口径」がどれほどの意味をなそう?

 確かに手振れ補正はいまのところソニーがいまいちなのは正しい。
 しかしこれも、物理的な手振れ補正ユニットを使っているからで、これもそのうち完全に「デジタル」になる。シャッターだってシャッターレスにしただろう? それも「ニコン」が!

 つまり、ソニーはじり貧ではなく、逆。むしろEマウントの小口径は何らハンデにならなくなっていくのだ。

 その証拠の一つにスマホがある。スマホは厚さの制約がある関係上、レンズの巨大化はできないが、センサーはどんどん巨大化していっている。そして、そんな巨大センサースマホが「売れている」。

 また、いまでこそキヤノンは大口径を言い出したが、EF-Mが設計されたとき、なぜEFよりも口径を小さくしたのだろうか? おそらく、あの段階では小口径でもフルサイズがいけると思っていた、ということだろう。
 マウントを増やすよりはAPS-Cで様子見してからフルサイズ参入したほうがいいからである。
 しかしそうはしなかった。

 なぜか。

 それだとEマウントとの差別化ができなかった。
 ここでいう差別化はスペックの話ではなく、「宣伝文句」の話だ。
 おじさんたちを騙すために、キヤノンは「フルサイズこそ至高」とかつて喧伝し大成功したときと同じく、小口径はクソという宣伝を始めたのだ。
 ニコンもこれに便乗したばかりか、もっと煽った。

 そうでもしないと、「ビジネス的に」ソニーと戦えなかったからだ。
 大口径は技術的要請ではなく、ビジネス的要請の産物にすぎない。

 また、先に述べたように口径なんてのはもう現代ではほとんど意味がないので、ぶっちゃけソニーより大きければ何でもよかったはずだ。
 レンズ設計が容易になる?
 じゃあなんでEF時代よりも高いのか? Zマウントにも電子補正前提レンズがそれなりにあるのか?

 つまり、レンズ設計は広角についてはそうかもしれないが、それ以外では大したメリットはない、ということだ。
 レンズ設計が容易になったのはフランジバックや口径のせいではなく、ミラーレス化のせいなのだ。だって、一眼レフなら、ぐにゃぐにゃで四隅が暗いのがOVFで即ばれするし、覗いてて気持ち悪いからね。

 基本的にミラーレス時代はキヤノンニコンソニーオリンパスの後追いから始まっている。だから最初はEやEF-Mの設計が妥当と思われたのだ。
 技術的には!

 そしてそもそも、電子補正のできない「アナログ時代」ですら小口径のFマウントがEFやAに劣っていたかと言えば劣っていなかったのである。
 口径を気にする連中はまさに、キヤノンの術中だ。
 目を覚ました方がいい。

 さらに、ソニーのビジネスの話だが、おそらくソニーはプロ用カメラは「広告塔」だと思っている(シネマカメラと違い、スチルカメラは露出の機会だけは多いからだ)。
 「広告塔」なのであって、カメオタ大好きな「特定プロ」のために機材を作っているわけではないのだ。「特定プロ」はそもそも金にならないし、世界のソニーは「特定プロ」を偉大な神のように崇めたりもしない。

 社内にカメオタが多いと、「特定プロ」は却って神格化され、一般人の感覚からかけ離れたカメラがつくられてしまう。リコペンがいい例ではないだろうか。
 プロには売れないのに、パンピーからはズレた製品を出している。
 カメオタは何か勘違いしているが、ブローニーの時代から一番世に出回るカメラはパパママカメラだ(いまはその地位に「スマホ」がある)。
 これは一貫して変わらない。
 だから、ソニーは本気でプロを相手にする気なんてない。ソニーが売りたいのはパパママカメラだ(キヤノンだってそうだが、キヤノンはどっちも本気でしている)。

 もちろん映像についてはソニーは本気だ。
 なにせ映像業界の雄だからだ。

 だからキヤノンニコンはスチル業界が「ジリ貧」の今、ソニーの映像分野から少しでも客を引っ張りたい。だから8Kに拘泥する。逆にソニーはスチル業界にこだわらない。
 スチルカメラ市場におけるプロ市場はとても小さい。取るに足らない。そうでないと思うなら、チェキの売り上げを見てみるといい(富士の映像の売り上げはほぼチェキであって、デジカメは些末な問題にすぎないし、チェキは21世紀で最も売れたカメラである)。
 逆にビデオカメラでは一般市場が小さい。だからプロの意見は重要だが、スチルはそうではない。
 キヤノンもシネマEOSで挑戦を繰り返しているが、なかなかうまくいっていないようだし、富士なんかシネマレンズはEマウント版を出している始末だ。

 ニコンが戦っている相手は、ビデオカメラの片手間にミラーレスをつくっているソニーで、その戦場はスチルだということだ。
 ソニーの本領にはまったく届いていない
 主戦場ではなく、いってしまえば、局地戦でしかない。「ソニー」にとっては。

 また、これからの時代はソフトウェアが重要になると同時に、おそらくASICだと思われる画像処理エンジンも大事だ。センサーよりもずっと大事だが、これに言及するカメオタは少ない。
 で、画像処理エンジンはセンサーほど高度な半導体ではない。しかし、これを内製しているのはソニーくらいだ。おそらくキヤノンも内製は可能だが、ニコンはできない。

 ニコンは結局、センサーも、画像処理エンジンも内製出来ない。ソフトウェア技術も高くない。Z9はおそらくアウトソーシング率が相当高い機種だと思う。
 Z9のセンサーはソニー製だという話だ。
 なら、ソニーはZ9の存在に気づいていたはずだ。キヤノンは知らなかったから、R3に無双なんてキャッチコピーをつけた。

 知っていて、ソニーは何もできなかったのか?
 違う。しなかったのだ。だって、ソニーにとってニコンはライバルではない。「お客様」なのだ。

 また、今後カメラにおける「物理的」な機構でどうしようもできないものが2つある。
 AF機構と電源だ。電源に関しては最早、人類がどうこうできるものではない(電気を使わずにどうしろというのだ?!)が、AFに関しても液体レンズでも使わない限り革命的なことは起こりえない。

 だからレンズは収差を光学的になくす時代は終わり、収差はソフトで補正し、可能な限りAF機構を優先する、という設計になっていくのは間違いない。
 とはいえ、光を扱う以上、AF機構が完全デジタルになることは絶対ない。
 ただ、モーターレスにはなるだろう。

 実際、カメラの進化はα6000以降、AFとともにあったとすらいえる。光学的なものや手振れ補正などというものは主軸ではない。
 実際、10年前のデジカメでも全然戦えるし、何なら500万画素以上ならかなり古いデジカメでも何の問題があるのか。

 あるのだ。

 AFと高感度耐性だ。10年前だと、いまでは耐えられないほど遅いし、ノイジーだ。ただ高感度耐性はセンサー性能向上とソフトウェア処理でかなりよくなった。
 だがAFはまだまだ伸びしろだらけの世界だ。

 ソニーがずっとAF重視なのも、ソニーは「大局を理解している」と言える。