オリンパスのFTの最大の失敗とはなんだろうか。豆センサーか? 確かに半分正解で半分間違いだ。失敗とは、思った以上にレンズの設計が大変だったことだろう。
というのも、フルサイズ2000万画素対応レンズとFT2000万画素対応レンズとでは、後者の方がレンズ設計が難しいからだ。
そんな馬鹿な! とフルサイズ信者のカメオタは思うかもしれないが、少ない範囲に精緻に描写するにはレンズも精緻な設計が要る(解像度、分解能の問題だ)。
それを端的に示しているのが、フォーサーズ時代の望遠レンズ70-300で、レンズの設計からして、シグマのOEMである。つまり、元はフルサイズ用だ。だから、当時のフルサイズの画素ピッチに合わせてあり、当時のフルサイズと同じ画素数のFTカメラで撮影した場合、かなり描写が甘い。
そりゃそうだ。
4倍の素子密度のセンサーで撮影しているのだから(同一の画素数だった場合、フルサイズは2倍のピッチを持つ。つまり、同一のセンサ範囲での分解能が悪い。分解能が悪いということはノイズも拾わないわけで、高感度耐性も高くなる。逆説的だが、「センサーが鈍いからこそ」フルサイズは夜間に強い)。
このため、フォーサーズレンズは意外と高い。
思ったほど安くない。Nikon1のレンズも思ったほど安くないが、同じ理由であると思われる。
じゃあ、1インチ未満のコンデジのレンズはどうなんだ? そう思うはずだ。2/3インチで2000万画素とかのコンデジ用レンズの「設計」は難しいんじゃないか? と。
その通りだ。難しい。フルサイズレンズのほうがずっと簡単に「設計」できる。
しかし、今度はセンサーサイズが小さくなるとレンズの「製造」が容易になるし、コンデジの場合、レンズとボディは同じ数だけ出るので設計費用の減価償却も容易い(またレンズ交換式ではないので、ボディーレンズの汎用性や相性、通信のテストなどを無視できる。ここでまたNikon1のレンズが性能のわりに高い理由がわかる)。
つまり、FTは中途半端といえる。
設計は難しく、製造コストも別に安くない。
設計は容易だが製造コストの高いフルサイズや、設計は難しいが製造コストが安いコンデジに比べて、まことに中途半端だ。しかし、いや、だからこそオリンパスのレンズ自体、品は大変よい。
開放から使えて、描写がカリカリである。このカリカリは好みが分かれるが、高画素に対応できるように設計されているためだろう。
カメオタにとって、フルサイズレンズが「設計しやすい」という事実は受け入れがたいかもしれないが、撮像面のフォーマットが大きいほうがレンズ設計しやすいからこそ、計算機以前のカメラの撮像面は大きい、という面がある。また、特殊なレンズをたくさん使うフルサイズでは、「製造の難しさ」があるのは本当だ。
ただこれは、フルサイズだから難しいという面(ガラス玉が大きいほど製造困難)と同時に、フルサイズ用レンズは高級品なので製造の難しいレンズが大量に使用される、という事実もある。
だから、特殊レンズを増やすとコンデジでもRXシリーズのように高くなる。「製造」にコストがかかるようになるからだ。
最終的には、ガラス製のレンズが樹脂製になったとき、レンズ価格は暴落する(カメオタはガンレフの未来やAFの未来は語るが、不思議なことに、今後のパラダイムになりそうな樹脂製レンズには言及しない。写ルンですという、偉大な前例があるのに)。そして、そのとき、樹脂製レンズを高度に作れるのはパナソニックなどの家電メーカーだ。